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5月29日
トスカーナからこんにちは。
鳥の声が1日中聞こえる毎日です。
家の前と裏に大きな糸杉の木が立っているのですが、その木にはものすごい数の鳥が住んでおり、朝は5時ごろからピチピチピチピチとさえずり始めます。
そして私たちはその声で目覚めるのです。
いいお天気がやってきました。
トスカーナのあの真っ青な空が広がっています。
雨が多くて心配していたポピーの花も健在で、平野いっぱいに真っ赤なカーペットを作り始めました。これからが本格的なシーズンのようです。
今年は暑くなるのが少し遅いようです。
何しろ雨で始まった5月。それに高い山にはまだ雪が残っています。
吹いてくる風もさわやかで、朝夕はすっかりひんやりしてしまいます。
暑いくらいの日中の気温との差が激しく、夕方は暖かいものを着ないと風邪をひきそうです。
でも、なんとも気持ちのいい時期です。
さて、蛍のほうですがこれもやはり今年は遅く、いつもでしたらもう家の庭にフワフワ飛んでいるのですが、今年はまだ見ません。
実は今週は特別にこの蛍とポピーを見にこられた方がいらっしゃって、蛍があまりいなくてちょっとあわてました。
彼女は三重県の繁子さん。私たちのガイドをご利用して下るのが今回で3回目の方です。
去年の3月に料理教室と観光、11月に観光、そして今年の5月はポピーと蛍の鑑賞の旅に来てくださいました。
こちら、この時期は夜10時近くにならないと暗くなりません。暗くないと蛍は見えませんから、先ずこの日はお昼から観光を始め、そして私の家でアーティーショックとアスパラガスの夕食をとっていただき、暗くなってから家の前の谷へ出てみました。
真っ暗な谷に目を凝らしてみましたが何も見えません。
う〜〜〜む、せっかく来てくださったのに残念だなー、と思っていましたら、
「あっ、何か光っているものが見えます!」
と繁子さんの興奮の一声。
私も主人も一生懸命目を凝らしていましたら、あー、いました、いました。
谷のほうにチカーッと光っているのが見えます。
お互いの腕を組みながら石ころの多い坂道を下って行きましたら、いました!
ふ〜わ、ふ〜わと数匹の蛍が飛んでくれていたのです。
こちらにもふわ〜と飛んできて、繁子さんの手の中に納まりました。
手の中でチカチカと光る蛍はなんとも可愛い。
「光の祭典」までいきませんでしたが、繁子さんに言わせると神秘的でよかったとのことで、ほっと一安心した私でした。
彼女には旬のものもたくさん食べていただきました。
お料理が大好きな方ですから、旬のものを食べていらっしゃるときはかなり幸せいっぱいムードです。
アーティーショックとアスパラガスが今旬なのは先週お知らせしましたが、それに加えて「バッチェッリ」も今旬なのです。
「バッチェッリ」は日本語で空豆と言うらしいのですが、こちらではこれを生で食べます。
大きなさやから豆を出して塩やオリーブオイルにつけて食べるのです。
ペッコリーノチーズやプロシュートと一緒に食べるとこれが更においしいとか。
私はちょっと青臭いのと食べると歯の裏がギシギシするのであまり好きではありませんが、旬の時期にはレストランでもメニューに出てきます。
お皿いっぱい出てきますのでビックリしてしまいますが、さやから出せば簡単に食べれる量です。
果物で旬なものといえば、今はイチゴとさくらんぼ。
ビッボーナの海の町からチェチナの海の町まで行く途中に、カリフォルニアというなんとも変わった名前の町がありますが、そこに夏になると採れたての野菜や果物を売る屋台が出ます。
すぐ横にある畑で採れているもので、新鮮さは勿論、安くて、そしておいしいのです。
繁子さんとも一緒に寄って見ました。
イチゴだけを買うつもりが、どれも新鮮なものだからついいろいろ買ってしまいました。
アスパラガスも一束が直径10cmはあるものが約2ユーロ50セント。
「ええーぃ、2束3ユーロで持っていけ!」なんてうまく買わせます。
こんな調子で木箱にいっぱい詰まった大粒で甘いイチゴを2箱(1箱7ユーロ50セント、1箱は友達におすそ分け)、さくらんぼ500g、サラダ3つも買ってしまい、「香辛料のハーブはいらないかい?」と、イタリアパセリ、セロリ、そしてバジルの葉もいただいて、車の中は八百屋さんのような匂いで一杯になってしまいました。
彼女には今回は海も見ていただき、レストランではウニのパスタを食されて、そのおいしさにも感激していただきました。
グラス工房にもご案内し、彼女に「カルチャーショックです!!!」と感激の声も上げていただきました。
寒くもなく暑くもなく、花あり、蛍あり、おいしい野菜や果物ありで、5月末から本当に素晴らしい季節になるトスカーナです。
6月はガイドご希望の方が誰もいらっしゃらないのが不思議なくらい。
繁子さんは来年の6月に又来ます、とおっしゃっていましたが、本当に次回は「光の祭典」を見ていただきたいものです。
さて、そんなガイドをしていたある日の夜、南アメリカに単身赴任をしている大家さんちのご主人(ダンテ)からメールがありました。
書き出しは、「チャオ!伯父さん、伯母さん」です。続きは、「長女が妊娠したらしい。子供が生まれたら、君達は伯父さん、伯母さんになるから、そのときはベビーシッターを頼むよ。じゃあ又、ジョン・クロード伯父さんへ」となっていました。
え〜〜〜、と二人ともビックリ。
ビックリした理由は、彼女はまだ結婚していないからなのです。
彼女に新しいボーイフレンドが出来たのは約半年前。
それまでは同じ町の男性とフィアンセとして付き合っていましたが、彼女のほうからお別れをし、その後付き合いだしたのがこの男性で、彼はなんと南イタリアの人。
彼女のおばあちゃんだけではなく、トスカーナの人はあまり南イタリアの人は好きではありません。
特に南イタリアの男性には、「こちらで優しい女性を貰い、南イタリアにつれて帰って下女のように使う」とあまりいい印象は持っていません。
でも彼女のボーイフレンドはこちらで仕事を持ち、大家さんちの家族全員が彼を知っていますし、私達もちょくちょくおばあちゃんの家で一緒に食事をしたりして、もう身近な人なのです。
ちょっと恥ずかしがり屋の気持ちのいい男性です。
ですから、このニュースを聞いた家族、友達は皆素直に喜んでいます。
イタリア人は男性でも女性でも子供が大好きなのです。
私もベビーシッターが出来ると知って今からわくわくです。
勿論、おばあちゃんも今ではひ孫の誕生を楽しみにしています。
でも私が一番嬉しかったのは、ダンテが私と主人のことを家族のように思ってくれていることです。勿論これは今に始まったことではありませんが・・・。
私も主人のジョン・クロードも実の家族との接触は殆どありません。
特に私の父が2年前に亡くなってからは、私には家族がいなくなりました。
でも、このトスカーナの郊外で新しい家族が出来たのです。
30年間、家族なしの生活をしてきたのに、今又家族に囲まれた生活をするなんて考えもしませんでした。
大家さんちのおばあちゃんも、「ダンテが一人息子だったのでもう一人娘が欲しかったのよ」、と私を娘のように思ってくれています。
ジョン・クロードにも彼女の息子のように話しをしますし、それこそ3日顔を見ないと「どうしたの・・・?」と電話をしてきます。
コーヒーは暇さえあればご馳走になるし、食事もいつでもいいから食べにいらっしゃいと言ってくれます。
食べに行くと、いそいそとおいしいものを作ってくれるおばあちゃんです。
私はひとつの家族を失い、そして新しい家族を得たようです。
こんなに素敵なトスカーナ郊外で、家族の愛に囲まれ、鳥の声を聞きながら生活する。
なんて幸運なんでしょう。なんて贅沢なんでしょう。
これ以上、何が必要でしょうか。
大家さんちの家族を通して、友達もたくさん出来ました。
友達も、もう何十年来の友達のように接してくれます。気さくなイタリア人の性格なのでしょうか。嬉しい限りです。
私たちの知っているスイス人やドイツ人の友達は大きな家を持っていますが、それが郊外の真っ只中にあるため、あまり町の人たちとの接触がありません。
パーティーも同じスイス人やドイツ人と一緒にすることが殆どで、もう15年ほどこちらに住んでいますが、いつまでたっても「外国人」の印象が抜けないのです。
こちらに来てから4年目の私たちのほうが町の人達と親しいくらいで、時々スイス人の友達がビックリしています。
この間はヴォルテーラの町を歩いていると、ごみ掃除車に乗っている知り合いの女性に声をかけられました。ちょっと立ち話をしたのですが、ご一緒していた日本人の方が、「清美さんは何処にも知り合いがいるんですねー!」とビックリされていました。
「あんたはもうポマランチーナだね」と町の人に言われます。
ポマランチェは私の住んでいる町で、この町の住民をポマランチーニといい、私は女性だからポマランチーナとなるわけで、町の一員と見てくれているわけです。嬉しいです。
トスカーナの郊外に住んでいると、時々昔の日本を思い出します。人々の情が深く、親切で、そして質素に生活しているけれど明るい。
ここで生活していると、ほっとしてしまいます。
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