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8月1日
今年のイタリアは去年に比べると本当にすごしやすい夏になっています。
とにかく朝夕涼しくなるというのがうれしい。
日中は30度を越す暑さでも、夕方7時頃から涼しい風が吹き始め、夜から朝にかけて約18度と、温度がかなり下がります。
私は寝室の窓を開けたまま寝るのですが、朝方など寒くて主人と掛けシーツの取り合いをやったりするくらいです。
昨日TVで放送していましたが、去年のイタリアの川は乾ききっていたのが、今年の川には水があふれ、農業を経営している人達にもまったく水不足の影響はないそうです。
今日はトスカーナの都会(フィレンツェやシエナ、ピサ)が一番暑くて32度。
ローマは30度、そしてナポリは28度になるそうです。
先週末、ちょっと変わったガイドをしていました。
盲目のイタリアオペラ歌手、アンドレア・ボッチェリをご存知の方は多くさんいらっしゃるのではないでしょうか。
ここ5〜6年急に有名になり、CDも世界中で売れている男性歌手です。
彼の深く柔らかい、情緒ある歌声にすっかり見せられた方は少なくないと思います。
埼玉にお住まいのセツ子さんもそのお一人で、数年前、偶然に彼の歌声を聞き、その声に恋をしてしまった女性なのです。
声に見せられてからは、どうにかしてトスカーナにある彼の生まれ故郷「Lajatico・ラヤティコ」に行ってみたい、できれば彼にも会ってみたいという願望が生まれ、彼女はご自分でLajaticoの町役場にメールを送っています。
そこで又親切にLajaticoの町長さんやその秘書からお返事をいただいたそうで、「Lajaticoに行きたい」願望はますます膨れ上がったようです。
「Lajatico」は私の住んでいる町から車で30分ほどの所にあります。
ピサに行くときは必ずその町の横を走り抜けます。
「Lajatico」と書いた標識を見るたびに、アンドレア・ボッチェリのことがスッと頭を横切ります。
セツ子さんから、「是非Lajaticoに連れて行ってください」というお問い合わせのメールをいただいたときに、「お安い御用です!」とお引き受けしたのは言うまでもありません。
先ず私はLajaticoの町役場に電話をし、セツ子さんとメールでコンタクトをした秘書と話をしなければと思いました。
電話をしてみるとなんとその秘書はもう勤めていなくて、別の女性が応対に出てくれました。
でも幸いなことに新しい秘書もセツ子さんが町役場にメールを送ってきたことを知っており、話がとんとん拍子に進み、町長さんにも会える段取りを取ってくれたのです。
私は更に、前秘書(ベアトリチェ)の電話番号を貰い、なかなか大変でしたが彼女を見つけ出し、Lajaticoでセツ子さんとの出会いをオルガナイスしました。
セツ子さんがご主人とLajaticoにいらっしゃったのは7月25日の日曜日。
ピサのホテルへお迎えに行きました。
ホテルのロビーに入っていくと、なんと彼女は着物を着て待っていらっしゃってビックリ。
私は着物を見たのも久しぶりだし、それを着ている人を見たのもまた久しぶりのことですが、それを始めてみる町長さんたちはどれほど驚き、喜ぶことか。
既にホテルを出るときから、彼女は回りの注目を浴びていました。
車の中で聞くと、彼女は前夜トッレ・デル・ラーゴであったプッチーニフェスティバルの「トスカ」のオペラにも着物を着ていかれたそうで、周りの皆にとても親切にされたそうです。
そうでしょうね。こちらで着物を着ている日本女性を見る機会はそんなにありませんからね。
そして更に驚かされたのは、セツ子さんは「トスカ」の会場でアンドレア・ボッチェリのお母様を見かけ、そして写真を一緒に写してきたのだそうです。
へ〜〜え!既に初日から彼女の夢がひとつかなえられたわけです。
ついでに、といっては失礼ですが、同時にご主人の方はサッカーのレフェリーで今一番人気のある坊主頭のコリーナを見つけ、一緒に写真を撮ってきたと喜んでいらっしゃいました。
そんなこんなでLajaticoに到着する前から車中は大変な盛り上がりようです。
ピサから約40分、夢にまで見られたトスカーナの風景を見ながら、いよいよLajaticoに到着しました。
Lajaticoはとても小さな町です。まだ旅行者も少なく、それでも日曜日の朝は町の人たちがあちらこちらにたむろして、世間話をしていました。
町の中まで車を乗り入れ、バーでたむろしている人達と写真を撮ろうと思った時、そこにあの目的の町長さんと偶然面会。
それから前秘書のベアトリチェとご主人と可愛い男の子、そしてなんと新しい町長さん(たったの32歳)とも面会し、町の広場にいる人達も私たちに注目の目を向け(特に着物を着ていらっしゃったセツ子さんに)、小さな静かなLajaticoの町が急に活気付いたのです。
それにしても、面会をお願いしていた人達全員が約束の時間前に到着してくれていたとは、イタリアでは驚く出来事です。
二人の町長さんはセツ子さんとご主人を先ず町役場にご案内してくださいました。小さな町の役場ですが、天井にはフレスコ画があり、そこの窓からの眺めは素晴らしいとしか言いようがないほど。
早速セツ子さんが用意してこられたプレゼントをそれぞれの人達に渡すと、町長さんからもLajaticoの資料やワインのプレゼントのお返しです。
実はこのワイン、オペラ歌手アンドレアの弟アルベルトが作っているワインで、ここでしか買えない物なのです。
Lajaticoに電話をしたときに、セツ子さんがこのワインを買いたいと希望していることを伝えたのですが、弟アルベルトがなかなか家にいなくてワインが買えるかどうか分からない為、この日のために用意してくれていたようです。
もうセツ子さんは飛び上がらんばかりの喜びようです。
記念写真をバチバチ撮ったあとは、この町にある劇場(出来たときにアンドレアがテープカットしたところ)、それからアンドレアが結婚式を挙げた教会、などなどを案内していただき、正午過ぎ、このミーテイングは終わりました。
前秘書のベアトリチェがなんと私の住んでいる家のすぐ近くで仕事をしていることを知ったり、なんせ皆イタリア人ですから、和気あいあいと時間が過ぎて行きました。
さあ、いよいよ名残も惜しく「さようなら」をした後、私たちは宿のあるヴォルテーラの町へ向けて車に乗り込みました。
車中ではアンドレアの音楽を聴いて頂き、セツ子さんはそれは夢心地だったことでしょう。
実は、話はここで終わらないのです。
この後2日間中世の町の観光をし、最後の日はフィレンツェ観光となっていました。
ところがセツ子さんはどうしてももう一度アルベルトのワインショップに行き、ワインを購入したいと希望されたのです。
さて、行ったところでアルベルトがいるかどうか分かりません。
店の鍵を持っている人が2階に住んでいるので、その人から購入できるかもしれないとの事でしたが、その人がいるかどうかも分かりません。
でも、私達は行ってみることにしました。ここが個人旅行のいい所です。
いつでも臨機応変に日程を変更することが出来るのです。
ワインショップには30分ほどで到着しました。
ショップは勿論締まっています。
鍵を持っている女性を探そうと、そこに並ぶいくつかの家のブザーを適当に押していると、道路を隔てた畑の方からおじさんが声をかけてくれました。
そのおじさんのおかげで、鍵を持っている女性を見つけることが出来ました。
畑で野菜を採っていたその女性に、
「ワインを買いたいのですが、お店を開けていただけますか?」と尋ねると、
「ああいいよ。でも今日はアルベルトが家にいるはずだよ」
と言い、彼の家にとっとと入って行ったのです。
え〜〜〜!!。今度はアルベルトにも会えるの・・・???
少し待っていると、長い黒髪を後ろに束ね、これも真っ黒な無精ひげを蓄えたサングラスをかけたアルベルトが出てきました。
身長は2m程もありそうな大きな男性です。
笑うと馬のような頑丈な歯が印象的でした。
そしてサングラスを取ると、そこには真っ黒で優しい目がきらきら光っていました。
アンドレアも目が見えていたら、弟のように綺麗な目をしていたのだろうなあ、とちょっとだけしんみり。
とにかく、アルベルトは親切にワインを販売してくれ、もう喜びで殆ど空中に浮いているようなセツ子さんと一緒に記念撮影にポーズもとってくれました。
「僕は殆ど家にいないので、今日はラッキーだったね」と彼。
ありがとうございました。
これでセツ子さんの夢は殆どかなえられたことになります。
後は、アンドレアの実物に会い、握手をして、写真を撮ることが出来れば本望ですね。
この夢もいつかはかなえられるのではないでしょうか。
夢はいつまでも持ち続けていてください。
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