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小さな映画館

私の住む小さな町カルカソンヌには映画館が二つあります。
一つは、街の郊外のショッピングセンター街に建っている複合映画館。中では常時5~6つの映画が同時上映されています。
ただ残念なのは、全ての映画がフランス語に吹き替えられているのです。子供も含めて画面の下に書かれた字幕を見るのが苦手、という人が多いのかもしれません。 でも、イタリア映画、アメリカ映画、そして日本映画など、全ての外国映画の俳優さんたちがみんなフランス語を話すのは見ていられません、聞いていられません。吹き替えの声からは感情が感じられないし、それにみんな同じ声に聞こえます。私は一度だけこの大きな映画館にフランス映画を見に行ったことがあります。中は新しくて綺麗でしたが、でもあれ以来、一度も行っていません。

ところが、カルカソンヌの駅を出てすぐのところに、とても小さいのですが全ての映画をオリジナル版で上映している映画館があるのです。我が家から歩いて10分弱のところです。
外から見ても古いのがわかりますが、中に入ると、座席が破れていたり汚れていたりして、かなりの年代物だということがわかります。
で~も、嬉しいのは全ての映画がオリジナル版なところ。そして、この映画館で日本映画も上映するのです!カンヌや他の映画祭で話題になった日本映画を取り上げるようです。
私が買い物に行くオーガニック店で、金曜日と土曜日だけバイトをしている女性がいます。彼女には子供が二人いますが、映画を見る以外に趣味はないそうで、切符が1ユーロ安くなる月曜日を選んで映画を見に行くとか。その女性が私に、この映画館で日本映画を上映していますよ、と教えてくれたのは去年だったか、それとも一昨年だったか。
早速行って見ると、上映していたのは「海街diary」でした。サイトで何度かこの映画の話題は見ていたので、知った時はそれは嬉しくて。上映時間を調べて観に行ってきました。監督が是枝裕和さんで、4人姉妹の日常生活を静かに描いた映画です。よかったーー!楽しみました!内容も良かったのですが、フィルムに映る日本風景が懐かしくて、そちらの方にも目が釘付けでした。

それからしばらくして、また同じ女性から「東京の美味しいもの」というフランス語名の日本映画を教えてもらい、調べてみると、樹木希林さん主演の「あん」でした。こちらは河瀬直美監督の映画で、ハンセン病の女性の話でしたが、これまた桜満開の風景など、日本の静かな日常生活が垣間見られる1時間40分ほどの、いい映画でした。

3つ目は、アニメの「君の名は」を観ました。光や影が精巧に描かれていて、そのテクニックには驚きましたが、内容的には感動せず。というか、途中で何がどうなっているのかわからなくなった私。

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上の写真がオリジナル版で上映している映画館Coliseeの外見です。一応映画館らしく、次の作品のポスターが貼ってあり
ます。建物自体はお屋敷のような建築様式なのですが、とにかく古い。

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入口を入るとすぐに切符売り場があります。小さいですが、中には一応3つのスクリーンがあります。白髪の女性が切符
を売ってくれます。左横にいるのは息子さんかな?
破れた座席の張り替えや、横に捨てられた紙などを掃除してほしいと思うのですが、この親子だけではそこまで手が回ら
ないのかもしれません。

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3つあるスクリーンのうちの一つ。写真では小さく見えますが、十分に大きなスクリーンです。約100席はありますが
、日本映画やアメリカ映画の際は、多くて10人ほどの観客しか入っていません。「君の名は」を見に行った時は5人し
かいなかったなぁ。つい先週、「スリー・ビルボード」というアメリカ映画を見に行きましたが、やはり10人しか入っ
ていませんでした。フランス映画の時はもっと多いのかもしれません。
かなり古いので、いつ映画館を閉めてしまうかわからない心配もありますが、しばらくはこのままオリジナル版の映画を
楽しませてほしいなと願っています。

パリのセーヌ河は洪水で大変なことになっています。水が橋のすぐ下まで迫っているので船が通れなくなっています。ノートルダム寺院なども閉鎖されていますし、土地の低い場所では床下浸水のところもあります。
パリには坂が多くて、水が届かない場所もありますので、旅行者たちにはそういった場所でパリを楽しんでいただけたらいいですね。

みなさまが今日も明日も、素敵な日を過ごせますように。