Kiyomi D.

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クリスタルの工房

colle

Colle di Val d’Elsa (コッレ・デイ・ヴァル・デルザ)という町の名前を聞いたことがあるでしょうか。
ここはクリスタルグラスで有名な町です。
クリスタルグラスといえばヴェニスと思い出される方も多いでしょうが、なんとここは12世紀には既に工房が存在し、14世紀になって「クリスタルの町」として広く知られるようになりました。
今では世界中にコッレ・ヴァル・デルザのクリスタルが発送され、日本の東京にも3件お店があるようです。

この町は私達の住んでいる所から車で約40分の距離にあり、シエナやフィレンツエに行く時にはいつも通り越してして行く町です。

古い町と新しい町の部分に分かれ、古い町は丘の上に長く伸びるように広がっており、そこを通る車の数が少ない為かなり静かで、柔らかく起伏した石畳を歩いていると、中世の面影がしのばれます。
道の両側にはさすがクリスタルのお店がたくさん見られます。

随分以前からこのクリスタルの工房を訪ねてみよう、と思いながらなかなか実現しませんでしたが、やっとこの間2件の工房を訪問する事が出来ました。

たくさんある工房の中でも町ではかなり有名な2件、「Vilca」と「Colle」です。
Vilcaの方は少し小さめですが、それでも訪問した日は大きな観光バスが二台も止まっていました。直ぐに工房に案内されて、せっせとお仕事をされている人達を目の前にする事が出来ました。

長いメタルの棒の先に真赤に溶けたグラスを巻きつけ、それを口で吹きながら型にはめてグラスを作ったり、又直接手で切ったり、引っ張ったりして可愛い動物たちを作っています。
溶けたグラスは丁度飴の様でグンニャリとしており、でも早く作業をしないと直ぐに固まってくるという、かなりの熟練を要するお仕事のようです。

型にはめてワイングラスを作っている若い人は仕事を始めてもう6年目になるそうですが、とっても愛想が良くて、親切で、仕事の合間に一生懸命自分のやっている事を説明をしてくれました。

グラスのワインの入る部分は型にはめて作りますが(大きさが同じでないといけない為)、足の部分は溶けたグラスをくっつけたら、手で引っ張って長くし、そして底は木のようなもので挟んであの平たい足場を作ります。
見てると簡単そうですが、いやー、あそこまで出来るにはどれだけ時間が要るのでしょう。

横手で、溶けたグラスを直接手で置物などに作り上げている人は、なんと35年もここでお仕事をされているそうで、10cmほどの猫や白鳥などの動物を静かにせっせと作っています。彼の顔が優しいこと。
「勿論、最初はあの若い人達のようにグラス作りから始めたんだよ」
と彼は教えてくれました。

出来立てのグラスや置物はまだかなりの高温で、これが直ぐに冷えるとひびが入る為、これらはもう1度オーブンのような所に入り、4~5時間かけてゆっくり冷やしていくのだそうです。

その後、クリスタルの出来あがりをチェックしながら綺麗に洗い、簡単なものはそのままお店へ、デザインの凝ったものは又その後別の工房へ行き、カットをしたり、透明にしたりと作業が続きます。

Colleはかなり大きな工房で、ここでは有名なデザイナーのグラスを作っているのが特徴のようです。
手に持ちやすいようにグラスの足の部分がひん曲がっていたり、日本をイメージして作られたという竹の形をした足もあります。
又、花瓶なども真っ直ぐではなく、柔らかい曲線を描いており、置物としても充分美しいクリスタルです。
灰皿なども、言われなければ、置物か、果物入れに使ったりしそうなくらい形が凝っています。

工房をぐるっと見て回っていると、突然アジア系の若い男性に出会いました。話をしてみると、なんと嬉しい事に日本男性でした。
彼はミラノでクリスタル作りの勉強を4年ほどし、このColleで修行を初めて8ヶ月ほど経つそうです。
お仕事をされているのに私が話しかけてしまったもので、イタリア人と共同作業をされていましたが、彼の手があいてしまい、1つグラスを無駄にしてしまいました。
ごめんなさい!
でもあれは又溶かして使うので、いいですよね。

ここでは「テイファニー」のクリスタル製品も作っています。
テイファニー用のクリスタルの形は逆にごくごくシンプルなものが殆ど。ニューヨークの人達はシンプルな形がお好きなようです。

さて、この工房のショールームではクリスタルを買うことも可能です。そして料金はなんと卸し価格なのです。訊いてみるとかなりお安い。
「テイファニー」のクリスタル製品も買え、これがショールームを出て、お店に出してしまった後は、料金が5倍に跳ねあがるのだそうです。

コッレ・ヴァル・デルザには2001年に出来たばかりのモダンな設計のクリスタル展示館があります。地上に出ている部分はほんの小さな入り口だけですが、奥、または地下がとても広いのです。
街の中心地から歩いて2分の所にありますのでここもぜひ訪問したい所です。

クリスタルの工房は土、日、祭日はお休みです。
訪問する際は予約が必要。

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