Kiyomi D.

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バーベキュー

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8月。夏のバケーションを楽しむ旅行者でいっぱいです。
週末は旅行者の移動が更に激しくなるときで、バケーションを終えて家に帰る人達、又これからやってくる人達で渋滞が続きます。
8月は店の経営者達も夏休みを取る時期で、町に行っても閉まっている店が多く、更に住民達は時間さえあれば海に繰り出していますので、町はスカスカ。
何処を向いてもバケーションの雰囲気でいっぱいです。
歩いている人の中で肌が綺麗に日焼けしたいるのはイタリア人、赤くなっているのは北ヨーロッパ人、白い肌でいるのは日本人。

イタリア人のファッションも格好よくて、旅行に出ない人でも毎日がバケーション、のような服装をしていて何時間でも座って見ていても飽きないほど。
イタリア人は夏が大好き、海が大好きです。

ところでこの間TVで放送していましたが、イタリア人旅行者の40%はバケーション先の宿泊先を変えるのを嫌うとか。
又、同じく40%はイタリア食以外の食べ物は好まないとか。
ふむ、ふむ・・・。

さて、イタリアは何の匂いがするのかご存知ですか?
朝はエクスプレスコーヒーの匂い。
昼からトマトソースの匂い。

では、この辺でこの間うちの庭で開いたバーベキューの話をすることにしましょう。

南アメリカ、サン・サルバドールに単身赴任で行っていた大家さんのご主人が今帰ってきていて、私の主人と一緒に日曜大工のようなことを殆ど毎日しています。
つい数日前には、小さな一軒家とも言える石造りの物置を作りました。
将来は誰かが住めるアパートに改築できるようにと、壁と屋根は立派になっています。
勿論,大事な所はプロの建築家に来てもらいました。
それが終わると、今度は庭にある、それこそ10年来のガラクタ置き場になりつつあった駐車場の回りを片付けて、それがあまりに綺麗に片付けられたので、それを家族、友達皆に披露しようと、その横に大きなバーベキューを造り、そしてバーベキューパーティーが開かれました。

それにしてもいつも思うのですが、こちらの人達は何でも自分で作ってしまいます。よく知っているのです。
電気の配線の仕方、排水溝の作り方、壁造り、屋根造り、セメントを作って石を重ねて壁が出来たら今度は家の中。
タイルを壁に張り、ドアや窓をつけ、バスタブや洗面台も自分でつけます。
いつの間にか友達も集まり、そんなこんなで家が出来上がり、といった感じです。感心させられます。
私の主人ジョン・クロードは、新しいことが学べるということと、男同士で何かを作り上げるということが面白いようで、毎日嬉々として外に飛び出していきます。
なんだか、男の子同士で遊んでいる感じです。

バーベキューに集まったのは親戚や友達を含んで全部で16人。それはそれはたくさんの肉が焼かれました。
焼くのは勿論大家さんちのご主人、ダンテ。
ダンテと言えば、トスカーナ生まれの「神曲」を書いた人で有名です。
イタリア語の作成者とも言われている偉大な人ですが、どういうわけか、この名前が付いている男性は少ないのです。
私は庭の野菜を使い新鮮なサラダを大きなボールに2個も作りました。
それぞれがワインを持ってきたり、アイスクリームを持ってきたり、とにかく食べながらの集いは楽しいのです。

でもこの日一番のイベントは、ダンテが久しぶりに家に帰ってきて、家族や友達の大切さを感じたことを話したことです。
食事も終わり、ワインも飲み、すっかり暗くなって食後のコーヒーと食後酒を飲んでいる時に、彼がスピーチがあると言い出しました。

「長い間家を離れていて、今回、家族と友達がいかに自分に大切なものか良く分かった」
という言葉から始まりました。
いつも冗談半分、本気半分で話す人が急にまじめに話し出したので、周りの皆もシーンとなってしまいました。
話は続いて、今回は新バーベキューのお披露目として皆に集まってもらったが、本当は皆にお礼が言いたかったのだ、というスピーチを彼はしたのです。
私は胸がキューンとなってしまいました。
テーブルの上ではキャンドルの火がゆらゆら揺れていました。
ダンテの気持ちはキャンドルの火が1本づつに飛び火するように、みんなの心を揺らしたようです。

みんな感銘を受けしばらくは静かだったテーブルでしたが、急にみんなの拍手で沸き上がりました。
そして大きな笑い声。
あぁ、いいですねー。

二番目のイベントは、結婚前に妊娠したダンテの長女、ロベルタとボーイフレンドを公式に皆に紹介したことです。
勿論皆、彼のことを知っています。
でも、子供は生んでも結婚はしない、という二人ですから、まだ公式には皆の前で紹介はなかったのです。
それで、今度はボーイフレンドのスピーチとなりました。
彼の名前は「ジョバンニ」。
「おい、ジョバンニ、何か言えよ」
と促されて、あまりおしゃべりではない彼も口を開きました。
「僕の故郷は遠い所にあり、家族とはあまり会えないけど、こうしてみんな僕に良くしてくれて、今はここにいる皆が僕の家族です。」
と話し出しました。
かれの故郷は南イタリアのカラブリヤなのです。
トスカーナの人達は南イタリアの男性をあまりよく思っていません。
南イタリアの男性はトスカーナで女性を見つけて結婚し、あちらに連れて行って下女のように扱う、と思っている人がまだ多いのです。
それをジョバンニも知っているようで、それなのにここにいる家族は僕のことを家族の一員のように扱ってくれて、うれしい、というようなことを話しました。
ここでも私は胸が熱くなりました。
私も日本から遠く離れて住んでいる者です。
彼と私が感じる所は違うかもしれませんが、でも皆に良くしてもらってうれしい、という気持ちは良く分かります。

ロベルタのおばさんは子供がいないのですが、ジョバンニに
「私はこの姪が大好きなの。大事にしてくれないと困るわよ」
と優しいけれど、でもハッキリと言っていました。
言葉は強いけれど、イタリア人のハッキリしている所は私は大好きです。

と、これがこのパーテイーのクライマックスとなり、皆の心を更に強く結び付ける機会となったのです。
ワインやら食後酒のビンがテーブルの上に沢山並んでいるけど、いい、後片付けは明日。
「みんな、おやすみー!」と遠くに響く夜鳥の声を聞きながら、それぞれが帰宅していきました。

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