Kiyomi D.

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Case Basse / カゼ・バッセ

case basse

毎日毎日良いお天気が続いているトスカーナ。
毎日洗濯をしたくなるようなお天気で、明るい日差しの中で洗濯物を干すときの気分は最高です。
夕方には必ず乾いていると確信できるのも、夏ではのこと。
エンジョイしなければ。

日中はまだまだ暑くても朝夕はめっきり涼しくなりました。
9月に入り、いよいよ秋が近いのかなあ、と感じさせられます。
それでも私は今週の初め、海に行ってきました。
すっかり旅行者がいなくなった海は最高です。
ビーチはガラガラで、私達のお隣さんは10mも離れていました。
海に入っている人も少なく、まったく貸切です。
海の水はまだまだ温かくて、これが現地に住んでいる人の特権で、旅行者が過ぎ去った後の海をゆっくりと満喫できるのです。イエイ!
トスカーナに住んでいることに感謝。

case basse

今日はモンタルチーノでブルネッロを作っているワイナリー「Case Basse」について書きたいと思います。
日本ではこのワイン1本2万数千円ほどするそうです。

先ず、私は「Case Basse」のメールアドレスを調べ、訪問可能かどうか訊ねてみました。
お返事がすぐに届いたのですが、そこには「どんな人が訪問希望なのか教えて欲しい」と書かれていました。
「ワインが単に大好きな人なのか、またはジョーナリストなのか、またはソムリエなのか」と・・。
「私たちはジョーナリストであり、ソムリエでもあります」と返事をしました。
私はサイトやまぐまぐにトスカーナの事を書いていますし、ジョン・クロードはソムリエに間違いありません。
そして、めでたく「喜んで訪問をお待ちしております」というお返事をいただきました。
そのときのメールに、「Case Basse」のサイトもご覧ください、とサイトのアドレスwww.soldera.it が書かれていましたので、読んでみました。

そこには
「「Case Basse」のワインはワインに情熱を持っている知人か面識のある人にしか売らない」、
そして
「啓発された農業の生産そして販売の哲学を共有し、Case basse の独特で、魅惑的な大気を呼吸したいと思う人を暖かく歓待したい」と書かれていました。
こんな所に訪問許可を頂いたのです。なんだか恐縮してしまいます。

case basse

その日、イタリアで一番美しい道といわれている「カシア街道」を走り抜け、モンタルチーノへ向いました。
「Case Basse」はモンタルチーノの町を横に見ながら更に西へ進んでいったところにあります。
5分ほどすると、広大なブドウ畑が目の中に飛び込んできます。
目の届く限り何処までもブドウ畑。
遠くにはワイナリー「バンフィ」の塔が望めます。
15分ほどで砂利道になり、更に少し進んだ所に「Case Basse」はありました。
郊外の真っ只中にそれほど大きくない石造りの家が数件固まって建っており、それらが「Case Basse」のオーナー、ソルデラ家の住居件オフィスです。
カンテイーナはそこから更にブドウ畑を通り抜けて行ったところにあります。

先ずは、メールを下さったオーナーのお嬢さんモニカが温かく私たちを迎えてくれました。
ワイナリーの管理、経営は若いモニカが任されているようです。暑い日でしたから、すぐに冷たいお水を出してくださり、早速彼女から「Case Basse」のワインつくりの哲学を聞かせていただきました。

いくつかの哲学があり、ひとつは土地つくり、ワインつくりに関してです。
1つは良質の生産は自然な耕作のための理想的な生息地を構成する複雑なecosystem を必要とする。
2つ目は過去の経験は研究から起こる革新と共有されなければならない。

ちょっと難しいのですが、1つ目はつまり、良いワインを育てるには周りの自然な環境がとても関係していてるということです。その為、奥様のグラツィエーラは毎日の殆どを2ヘクタールもある庭で過ごし、ワインにいい影響が出るよう、自然の環境を保ちつつ木や草花の手入れに余念がありません。
そして、2つ目は伝統的なワイン作りの方法は貴重なものだけど、そこに新しい方法も加えていかなければいけないということです。

case basse

オーナーのジアンフランコ氏は「美味しいワインを造ろうという気持ちが大事」と、途中でやってこられて話しだしました。
ワインを作り始めて32年。最初から葡萄の栽培にはまったく薬品を使わず、自然の原理を大事にして、育ててこられたそうです。
それでも彼は自分のワインをオーガニックのワインとは呼びません。
どうしてかというと、オーガニックのワインと呼ばれるワインで美味しいワインはないからと彼はいいます。
オーガニックと呼ばれなくても、自然なものを使って自分の納得したワインを作るのが彼の哲学のようです。

葡萄の成長に薬品を使う、使わないという前に、先ずは葡萄の苗が育つ土地が大事なのだそうです。
Case Basseには200ヘクタールの森もあります。
庭や森が良質の葡萄を作るのに大変影響していると強調します。ジアンフランコ氏は口癖のように「自然のバランスが大事」といいます。
その結果、葡萄の生産は量よりも質となってしまいますが、良いワインを造るだけが彼の目的なのです。
ちなみに、彼の一番気に入っている彼自身のワインは1979年物だそうです。

いろいろ聞かせていただいた後は、いよいよカンティーナへ向いました。
行く途中のプールサイドにはモニカの子供達が遊んでいました。庭園のような見事な庭では、まったくお化粧なしの、庭師かなと間違いそうな、ちょっと恥ずかしがり屋の奥様ともお会いしました。こうしてコツコツと毎日庭の手入れをしていらっしゃるのだそうです。何千本の木、全てを奥様が自然のバランスを考えられて植えられたのだそうです。それは見事。

さて、一歩カンテイーナの中に踏み込むとひんやりとした空気が身を包み込みます。
ここも自然を大事にして作られた場所で、壁にはセメントを一切使用せず、大人の頭大の石を積み上げて、それを金網で支えてあります。これで壁は息が出来、1年中同じ温度、湿度を保つのです。
温度コントロールもなし、湿度コントロールもなし。機械、コンピューターは使いません。
ワインは大樽に入っていましたが、ここでもジアンフランコ氏の哲学があり、樽の匂いや味の助けが要るワインは良いワインではないと。
Case Basseのワインは樽に入っているけれど、ワインに樽の味や匂いをつけようとしているのではなく、熟成のために入れているのだとか。
逆に樽の味や匂いの付いたワインは好きではないとも言っていました。葡萄そのままの味が出ないといいワインではないそうです。
その為、普通ワイナリーでは何年も使用した樽の木の味や匂いが薄れると、その後は焼いてしまうか、イギリスなどに安く売り、ウイスキーを造るのに再使用するのですが、Case Basseの樽は、古くなればなるほどいいと、ジアンフランコ氏は言っていました。これは初耳です。

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いよいよ、ここでワインの味見が始まりました。
ジアンフランコ氏が樽のちょうど真ん中辺りにある小さな蛇口から直接グラスにワインを注ぎいれます。私は樽から直接飲むのは初めてなので感動。
味見をしたのは2000年物と2001年物。
2001年物は美味しいのですが、やはりまだ若い。
でもたった1年違いの2000年物がそれは美味しかったのです。
口の中に甘みが広がり、そしていつまでも余韻が続く・・。
ジアンフランコ氏は「まだ若いけどね・・」、と言っていましたが、彼もかなり気に入っているようでした。何しろ自分の子供のように手をかけて育てているのですから。

「温度調節も何もしなくて、いつ美味しいワインになったか、どうやって分かるのですか?」、と質問してみると、ジアンフランコ氏の答えは、「自分の鼻」でした。
娘さんも、そうだと言うように頭を上下に振り、とにかく彼の鼻ひとつでワインの出来を判断するのだそうです。これを生きた定規と言うのでしょうか。
美味しくなければいつまでも樽に寝かせます。
「その鼻が娘さんのモニカにも受け継がれていますか?」との質問に、ジアンフランコ氏は「うん、ちゃんと受け継がれているよ」とお答えでした。
ちなみに、Case Basseのワインは搾り機にかけないのだそうです。これも初耳。

case basse

カンティーナの写真は撮らないでくれと頼まれましたので、ありませんが、騒音や温度の変化を避け、自然の状態の中でひっそりと並ぶ大樽たちのカンティーナにはソルデラ家の愛情が満ちあふれているようでした。

Case Basseではブルネッロの生産のほかに、同じ葡萄を使ったインティスティエティというワインも時々生産します。
ブルネッロよりも短い期間樽に寝かせ、その後ブルネッロは瓶に6ヶ月~12ヶ月入れ精錬させますが、インティスティエティのほうは6ヶ月~18ヶ月瓶で精錬させます。
ワインをおいしく飲むためのグラスも考案、生産しており、ソルデラ家のワインに注ぎ込む愛情は計り知れません。
ちなみに、ワインのラベルにはイルカが描かれています。

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