Kiyomi D.

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チンタセネーゼ

cinta senese

10月と11月は雨が多くなるイタリアです。
トスカーナも数日前から雨が続いています。
重い雲が青空をさえぎり、なんとなく物悲しい毎日です。
洗濯物が乾いてくれないのが、私にはいっそう悲しい。

ただ、気温は10月の後半とは思えないほど暖かく、パレルモではいまだに人々は海に繰り出し、泳いでいます。
「この時期にこんなに暖かいのは問題だ。少し寒くなってくれたらいいのだけど・・」という声も。

雨が多くなると大変なのがヴェネツィア。
又浸水しています。
かわいそうな旅行者達は幅50cmほどの架け渡された板の上を歩いています。

雨のためにオリーブの収穫も止まっています。
今年は良い気候だったためオリーブの実は豊作で、それを目の前にしながら収穫が出来ないのはつらい所でしょう。

さて今日は、あの噂の「チンタセネーゼ」の実物を見てきましたので、それをお知らせしましょう。
「チンタセネーゼ」。
黒い身体に、胸の所から白い帯状の線がぐるっと背中まで回っています。
線の中にある前足も白です。
耳は小さめで前方を向いており、目を保護するように少し下がり気味です。
鼻は普通の豚より細くて長め。
「チンタ」とは帯という意味で、まさしく帯の入った黒豚。
シエナ近郊原産の豚の品種で「セネーゼ」となります。

この豚の特徴は、体の色は勿論ですが、まさしく肉にあるのです。
普通の豚に比べて、味があり、脂身が少ないけれど柔らかく、その肉の品質は尊重されています。
それは、チンタセネーゼが大きな自然の場所で繁殖し、自由に動き回りながらのんびりと育つため、肉が上質になるからなのです。
別の言葉で言うと、チンタセネーゼは小さな場所では育ちません。

食用の豚は小さな檻に入れられて、餌を食べるだけ食べて動き回る場所がありませんのでぶくぶくと太ります。
勿論これが飼育者の狙う所なのですが、同じ方法でチンタセネーゼを飼育すると死んでしまうのです。
この為、豚の大量生産が流行りだした頃から、このチンタセネーゼが姿を消し始めました。
絶滅しかかったとも言います。

こんなにおいしい豚を絶滅させてはいけない、と行動を起こしたのがスローフード協会で、今ではトスカーナだけで100件ほどの農家がチンタセネーゼを飼育しています。
勿論、大きな半自然の環境を与えられる農家はそんなになく、大量に飼育している農家はそのうちたったの3件ほど。
私達はそのうちの1件「Pulidori Brunella」というオーガニックの製造農家を先週訪問してきました。
ちなみに「Pulidori Brunella」はオーガニックの認定を受けていますが、スローフード協会には入っていません。

チンタセネーゼ製造農家はテルメで有名なカシアーナテルメの町を通り越してすぐの所にあります。
経営者である奥さまブルネッラは素敵な笑顔で私たちを迎えてくれました。
彼女と彼女の娘さんが経営のメインで、大学から飼育を学びに来ている若い学生二人がお手伝いをしています。
それぞれ始めましての挨拶を交わしましたが、本当にみんな気取らず気持ちのいい人達です。

弁護士の仕事をきっぱり止めて、オーガニックの豚肉を製造している若いアメリカ人カップルも一緒に、早速チンタセネーゼを見せてもらいました。
最初は若い子豚とお母さん豚がいる所です。
生後10日ほどという子豚がいましたが、なんともペットにしたくなるほど可愛い。
黒いボデイーに白い模様は正にペットのよう。

ブルネッラが、 「私がこの仕事をし始めたのは、この土地を愛しているから、そして豚に化学製品の餌ではなく自然な穀物を与えて、私達の身体にいいものを飼育したいから」
と言ったときの素敵な笑顔が忘れられません。
こんなに素敵な笑顔で飼育していると、豚だってすくすくとおいしく(!)育つに違いありません。

「Pulidori Brunella」では、チンタセネーゼの飼育だけではなく、肉を加工したり、又肉だけの販売もしています。
チンタセネーゼに食べさせる餌はこの近郊で取れた穀物だけを使用し、加工した肉も近郊のレストランやお店だけに販売しているそうです。
徹底しています。

農家訪問の最後には、「Pulidori Brunella」で加工されたサラミやプロシュート、ベーコンなどをワインつきで味見させていただき、とても温かいおもてなしを受けてしまいました。
「料金は?」と訊くと
「いいのよ、気にしなくて」
とウインクして言ってくれたブルネッラ。
本当にどうも有り難う。
グラツィエミッレ!

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