Kiyomi D.

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花吹雪

primavera

家のベランダの横に大きな杏の木があり、1週間ほど前から桜にそっくりな花を満開に咲かせています。
それが今、風に乗って舞い始めました。
家の回りはピンク色の花のカーペットが出来上がりました。
青空の中に花のドレスをまとって立つ杏の木は、何とも晴れやかです。

法王パウロ2世が日曜日に亡くなりましたが、彼は今ローマにあるサンピエトロ寺院に横たわっています。
その彼の最後の姿を見ようと世界中からサンピエトロ寺院に人々が集まって来ています。
TVではローマ市内は大変混雑しているので車は使用しないように、その代わり市内バスを利用するようにと呼びかけています。
驚くことに、携帯電話にもその呼びかけのメッセージが届きました。

3分ごとに到着する電車からは人々がはき出されてきます。
どのバスも満員状態。
そうしてやってきた人々は寺院に入る列に並ぶのです。
その列は黒々とサンピエトロ広場の前の長い車道に伸びています。
その長さ7kmとか。
そしてなんと、サンピエトロ広場の入り口の前に来るまで約5時間待ち。
やっとサンピエトロ広場に入ると、そこから寺院の中にはいるまで又5時間待ちだそうです。
最低7時間、最高10時間待ちなのです。
今日はポーランドからも団体がやってくるようで、ローマの混雑はまだまだ続きます。
ちなみに寺院は夜中も開いています。

一つだけ不思議なのは、日曜日から法王はこうしてみんなの前に横たわっているわけですが、別にガラスの箱に入っているわけでもないし、このまま8日のお葬式までああやって横たわっていても、大丈夫なのですね?
腐敗はしないのでしょうか?

法王の様態が悪くなった金曜日からTVの番組は一斉に彼が法王になってからの写真を流し始めました。
写真でなければ彼についての思い出話。
どこのチャンネルを回しても全て彼のことでした。
全く同じ画面。
それが金曜日、土曜日、そして勿論日曜日と3日間続きました。
ほかの番組はいっさい見られませんでした。
私の家にはケーブルTVがあり、映画やアメリカの番組が見られたのですが、大家さんちにはありませんので、大家のダンテは私の家にTVを見に来たくらいです。
「娘も何も見られないとやけになっているよ」、とダンテは言っていました。
彼はF1を見に来たのですが、残念ながらそれもTVでは放送していなくて、又悔しがること。
1日はいいけど、3日もこんな状態にするなんてちょっと行き過ぎでは・・、と彼。
数ある宗教の一つであるカトリックですが、世界中に広がる宗教徒の数が半端ではなく(11億人)、その影響は大きいのです。

パウロ2世が法王になったとき、私はスペインを自転車で周っていました。
26年前の話です。
あの当時一緒だったスイス人の画家と新しい滞在の場所を求めてスペインに行くことになり、私には乗り慣れない自転車を使っての旅でした。
寝袋を始め、キャンピング道具一式、着替えなどの入った袋が自転車の前と後ろに積まれ、スイスを出発しました。
フランスとスペインの国境まで列車で行き、そこからいよいよ自転車で旅行が始まりました。
とにかく自転車の後ろに積んだ荷物が重くて、ちょっと油断すると自転車の前が浮き上がるのです。
初めはヨロヨロしながら町を通り抜け、怖かったことを覚えています。
郊外の道では大型トラックが横を走り抜ける度に私の自転車を揺すり、倒れそうになりました。
ピレネー山脈はその当時のギヤーが3つしかない自転車では登ることができず、長い道程を押しながら登ったものです。
横を通り越していく車を見ながら、何度恨めしく思ったことか。

primavera

それにしてもスペインは大きい。
あの大陸を自転車で旅行をしたなんて、自分で信じられないくらいです。
旅行中は、途中で行き会う小さな村や町で食料などの買い出しをしましたが、時々パン屋もないほどの小さな村に行き着き、驚いたものです。
寝るのはいつも村はずれの郊外。
人目につきにくい場所を選んでそこに寝袋を広げます。
ある風がとても強い日、会ったばかりの羊飼いのおじさんに「家で寝たらいい」と招待されて行ってみると、おじさんは羊たちを外へ追いやり、私たちが羊小屋で寝ることになりました。
寝袋の下は羊の糞でいっぱいです。あの時のなま暖かい空気は忘れません。
朝目が覚めると、新鮮な羊のお乳を絞って朝食に飲ませてくれました。

ある時は、向こう側が見えないほどの大きな谷で、羽を広げると3~4mはありそうなコンドルの群衆をみました。
初めは何かを食べているようでしたが、一匹が飛び立つと急に全部が飛び始め、私の直ぐ目の前を大きな羽を羽ばたかせながら飛んでいきました。
その大きくて素晴らしかったこと。

自転車で旅行をすると、車や列車で旅行するときにはみられない町や村の小さな出来事や人々に接することができます。
出会った人々はみんな親切で、直ぐに話しかけてくるし、いろんな情報もくれました。
ただ、イタリア人と比べるとスペイン人は少し恥ずかしがり屋が多いように思います。

3ヶ月そうやって自転車で旅行をしながらある町に着いたとき、法王が変わったというニュースが目に入りました。
その前に新しい法王が選ばれていたのですが、その法王はたった40日程度で亡くなってしまい(何でも暗殺されたという噂がその町ではあがっていましたが)、新しく選ばれたのが、パウロ2世でした。
私はカトリック教徒ではありませんので、別に大きな関心を持ってニュースに目を向けませんでしたし、これから未だ続く旅行のことの方に関心が大きかったのですが、きっとこの時も大きなセレモニーがあったのでしょう。
あれから26年が経ち、その法王も亡くなってしまいました。
なんと月日の経つことの早いことか。
私もそうやってある日、逝ってしまうのです。
その日が来るまで、与えられた人生を自分の好きなように生きたいと切に思います。
そうだ、今日は綺麗な苺を見つけましたので、これから私のために苺のショートケーキを作ることにしましょう。
大家さんにもお裾分けしようっと。

今、モナコのレーニエ3世が亡くなられたニュースが入りました。
法王に次いで、モナコ大公。
お葬式続きで、さて、イギリスのチャールズ皇太子はいったいいつ結婚できるのでしょうか?

primavera