Kiyomi D.

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ホリデーハウス

valle dorata

待ちに待った暑い日がやってきました。
暑くもなく寒くもない5月も爽やかで良かったのですが、やはりこの時期になると半袖が着られる気温にならないとみんなあまりハッピーではないのです。
勿論、海はもう2~3週間前から開いており、太陽の少ない国のドイツやオランダの旅行者達は既に冷たい水に入って泳いでいましたが、地元の人たちはもっぱら甲羅干しで我慢をしていたようです。
それでも先週、海際の町に行ってみると日焼けをしている人が多いのには驚きました。

朝夕はかなり冷えまして、その為蛍の出現も遅れていましたが、ここ数日の暖かさで大量の蛍が誕生し、夜の10時近くに家の前にある谷の下まで見に行ったら、まさにクリスマスツリーのようにキラキラとそれは驚くほどの数の蛍が輝いていました。夜空には満天の星、目の前には満とうの蛍。
水の綺麗なところに蛍は出ると言われますが、こちらは郊外ですから水はなく、その代わり空気の綺麗なところに蛍が出るようで、大きな工場も車の数も少ないこちらの郊外では驚くほどの数の蛍が見られます。
これは見た方でなければちょっと想像しがたいでしょう。

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気温がマイルドだったせいか、平野の緑や花の色がそれはまだ鮮やかで、まさにポストカードの世界にいるようです。
そんな中、早めのホリデーをとった旅行者達がその素晴らしいお天気を楽しんでいます。
2年ほど前から少なくなっていたドイツ人旅行者も今年は又増え、オランダ人、フランス人、スイス人、ベルギー人を初めとする北ヨーロッパ人旅行者、そして沢山のアメリカ人旅行者がやってきます。
これからの時期、くねくねと曲がった田舎道に外国ナンバーを付けた車が地元の車よりも多く見られるようになるのです。

陸続きとは便利なもので、特にヨーロッパがユーロという同一の通貨を使い初めてから国境でパスポートコントロールをしていた税関というものがなくなり、 止められることもなく車ですっと通過しますので、どこで国が変わったのか気を付けていないと分からないくらいです。
そうやって遠くから車でホリデーにやって来る家族連れに今人気があるのが、郊外に建っている宿泊地、アグリツーリズモ又はホリデーハウスです。

アグリツーリズモとホリデーハウスの違うところは、そこで農業をやっているかどうかの違いです。
アグリツーリズモのほうは昔の農家を改造したもので、今でも葡萄畑、オリーブ畑、又家畜などを飼って、まだ農家の機能をはたしているところなのですが、ホリデーハウスの方はまったくそう言うことに関係がありません。
その代わりにプールがあったり、子供達の遊び場が作ってあったり、バーベキューをするところがあったりと、まさにホリデーリゾートの田舎版と言ったところでしょうか。

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この違いをのぞいては、両方とも郊外の真っ直中に立っている、キッチンのついたアパート式の宿泊地です。
たまに、キッチンなしのお部屋だけ、というのをいくつか用意しているところもありますが、そう言ったところではレストランの設備があるかどうかしっかり確かめておいた方がいいでしょう。
近頃のアグリツーリズモやホリデーハウスはバスルームもモダンで、バスタブこそ余り見かけませんが、 使いやすい 機能のいいものになっています。
キッチンには鍋、フライパン、皿、コップ、コーヒーメーカー、ナイフ、フォーク、スプーン等、お料理して食べるのに困らないものが殆どそろっています。

だからこそ、特に子供のいる家族連れはレストランやホテルで費やす費用を節約するために、キッチン付きのアパートを好むのです。
一番の節約家はオランダ人だそうで、子供のいない若い夫婦でも、自分たちの車にトイレットペーパーから卵まで何でも積み込んでやってくるのだとか。
「トスカーナに来るのに自分の国からワインを持ってきた奴がいるよ!」
と、あるトスカーナ人はその節約ぶりに呆れていたことがあります。

まあ、それは少数派として、「トスカーナ郊外に宿泊しよう」と言う傾向はこちらでは10年ほど前から始まりました。
外国人だけではなく、北イタリアや南イタリアからもトスカーナにやってくる人は少なくありません。
イタリアの中でも、トスカーナは食事とワインが美味しい州、と言うことで知られており、食事とワインが美味しいと言うことは、そこにある風景も素晴らしいと言うことになり、ホリデー先に選ばれることが多いようです。
特に私の住んでいるところは海にも近いとあり、太陽が少なく、海もない国の人たちには最高のホリデー地なのです。

今日私のHPに載せている写真は、私の住んでいる近くにあるホリデーハウス「サン・ピエトロ」のものです。
ここのオーナー、アレッサンドロは数年前まで塔の町サン・ジミニヤーノでアラバスターという石のお店を開いていましたが、そこを貸して、今はホリデーハウスを2軒も管理しているやり手の、そして優しいイタリア男性です。
まず、廃家を買い取り、それをホリデーハウスに改装するのですが、業者に任せるだけではなく、自分の手で出来るところは全部自分でやってしまいました。
お父さんの力も借りて、家の回りの芝生を植え、歩道を石で造り、バーベキューの暖炉も手作り、屋根のついた駐車場も自分たちで作りました。
沢山の木や花も植え、素焼きの壺も庭に飾って、トスカーナの雰囲気をふんだんに醸し出しています。
アパートの内装はお母さんと奥さんの仕事で、それぞれのアパートが違った装飾で、それは見事です。

彼は今でも毎朝早くからホリデーハウスに出かけ、まずプールのお掃除、それから草を刈り、そしてしなければいけないことを済ませ、あれやこれやと、休むことなく2件のホリデーハウスの世話をしています。
どうすれば旅行者に楽しんでもらえるか、と言うことを常に考えている人で、その為にはベストを尽くす人なのです。
そんな気持ちがあるからでしょうか、「旅行者が減って困った」と言う宿泊地がある中で、彼のところは予約をしてくる旅行者が後を絶ちません。

数週間前に、彼は急な斜面や森の中も走るというモトークワッド(写真をご覧ください)を、お客様に利用して喜んでもらおうと3台購入したのですが、これが大ヒット。
一緒に出かけるために更に忙しい毎日を送っています。
宿泊客も気さくな人が多く、いつも和気あいあいとした雰囲気のあるホリデーハウスです。

自然が大好きな人には最高の滞在場所だと思うのですが、ただ車で来られないアメリカ人と日本人には少し大変なところです。
まず、郊外に建っているホリデーハウスまでどうやって到着するのか?
バス等ありませんので、行き着く方法が全くありません。
アパートにキッチンはあっても、そこで使う食材はどうやって買うのか?
ホリデーハウスには自動販売機すらありませんから、自分で買い物をしない限り食事が作れません。
レンタカーをするしか方法はないのです。

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