Kiyomi D.

ホーム     トスカーナ日記     プロファイル


バースデーディナー

restaurant

「春眠は、暁を覚えず」と言う言葉があちらこちら(日本のネット上)で見かけられますが、私もなんだか毎日眠り足らないような状態が続いています。
早朝、飼い猫に2度も起こされますが、猫がいなければ10時近くまでぐっすり眠っていると思います。
昼食を食べ終わると又眠くなるし、夕食を食べ終わっても片づける元気がなくてちょっと休憩、となります。
この時期みんなそうなのよ、なんて聞きますが、特にヨーロッパでは夏時間等と時間の変更がありますので、それも身体が微妙に感じているようなのでもあります。
ジョン・クロードと二人して何となく疲れ気味なのでこの間マグネシウムの錠剤を買ってきて飲むようになりました。
変化あるかしら・・?

いよいよ4月。
4月と言えば私の誕生月なのですが、この時期は桜が咲いたりいいお天気になったり、又学校の新学期が始まったりで、なんだかおめでたい、華やかな時期のように感じます。
ずーっと雨の多かったトスカーナも4月に入った途端に素晴らしいお天気になりました。
私の誕生日へのプレゼントかな、と勝手に思ったりしていますが、待ちこがれたトスカーナの太陽が輝き始めました。
柔らくうねった丘は雨が多かったせいで例年よりも早くから目に鮮やかな黄緑色でドレスアップしており、朝露などに濡れたその丘に太陽が輝くとまるでビロードのように浮かび上がります。
そんな丘が沢山、遠く何処までもなめらかに続き、所々丘のてっぺんに建っている一軒家までのアプローチには濃い緑色の糸杉がピンッと立ち並んでいます。
どなたか「何処を撮っても絵葉書になりますね」とおっしゃっていましたが、本当にその通り。
そんな風景が太陽の中で輝いているのです。
じっと見ているとまるで自分が絵葉書の中に入り込んだような錯覚を覚えてしまいます。
気温も上がったし、木々の緑も日々に大きくなっているし、やっと冬が過ぎ去ったようです。

私の誕生日は7日だったのですが、その夜はジョン・クロードが星付きの有名レストランに招待してくれました。
到着するまで何処のレストランなのか秘密で、久しぶりにワクワクと車に乗り込みました。
ジョン・クロードが「レストランは海側だと思う、それとも山側だと思う?」と訊くので「海側」と答えると「違う、山側」と言われ何処のレストランかまったく想像もつかず。
約1時間近く走ってコッレ・ヴァル・デルザに近づいたときにやっと分かりました。
このクリスタルグラスで有名な古い街の中に、一つ星を貰っているレストラン「アルノルフォ」があるのです。
以前から名前は聞いていましたが、シエナやフィレンツエへ行くときにこの街の横を通り過ぎるだけで食事は殆どすることがありませんでした。
丁度私の誕生日で何処かいいレストランを探していたジョン・クロードがここを思い出したようです。
実の所彼は私がいつも食べたがっているロブスターを腹一杯食べさせてやろうと海の目の前に建つレストランに電話をしたようですが満席で、次にかの有名なガンベロロッソに電話を入れるも誰も答えず、それでこのアルノルフォになったようです。
アルノルフォはイタリアのレストランガイドブックには勿論、日本の有名な雑誌にも載っており、場所が私の住んでいる近くということもあって一度は行ってみたいと思っていましたので、ロブスターも魅力がありましたが、先ずはウキウキと古い町に入って行きました。
夜の寒さが弱まり、そぞろ歩くには素敵な夕べでした。

8時ちょっと過ぎにレストランに到着した私たちは最初の客でした。
カメリエーレや女性のソムリエ達が一斉に迎えてくれます。
普通のイタリアレストランではこんなことありませんからね、さすが星付きレストランでしょうか。
レストランは小さく、テーブルが6卓ほど、30人程入ると一杯になる感じです。
クリスタルグラスの街ですからその作品がテーブルの上や壁の横に飾られていて、後はモダンアートが壁に掛かっているだけのすっきりした室内です。
そうそうクリスタルグラスで出来たシャンデリアが立派でした。

席に着くと先ずはウエルカムドリンクのスプマンテが注がれます。
美味しいのでつい飲み過ぎてしまうのですが、アルコールに弱い私は気を付けなければそれだけで顔が真っ赤になってしまいます。
私たちがオーダーしたのは「春」と言う名前の付いたメニューでした。
メニューというのはアンティパストからスープ・プリモ・セコンド・チーズ・デザートまでが続けて出てくるものです。
胃の小さい私に全部食べられるかな、と少し心配でしたが、せっかくなのだからこのレストランの創作品をいろいろ味見しないと、と言うことで挑戦することにしました。
ワインは私がほとんど飲めませんのでアンティノリの白の小瓶だけ。
白ワインですが素晴らしいグラスに注いでくれて、いい香りでした。

さあ、しばらく待っていると長方形のお皿に味見程度の小さな物がカラフルに並んで出てきました。
これはメニューには入っていないレストランのお口汚しです。
色は綺麗だし、飾りは素敵、味もとても良くて、見ても食べても幸せ気分。
でも、2回目のお口汚しが出てきた時はちょっと驚きました。
そしてその辺りで 私のお腹が 既に6部目ほど一杯状態になり、やばい。
ウエストがゴムになったズボンでも履いてくれば良かったと悔やまれましたが遅かりし。
お口汚しが終わってやっとメニューが始まりました。
その一つずつは説明しきれませんが、とにかく飾りが素敵、正に料理人の創作品です。
お味もよろしく、満足でした。
ただ、初挑戦したフォアグラがちょっと私には駄目でした。
ジョン・クロードは、こんなにデリケートなフォアグラは食べたことがないなんて喜んでいましたが、駄目なものは高級でも駄目。
それからセコンドの鳩のお肉も又残念ながら駄目でした。
あ~ぁ、もったいない。

素晴らしかったのがデザートです。
幾種類ものお菓子がお皿に載っており、見ているだけで嬉しくなります。
デザートだけで3皿もあり、あちらこちらと味見をしていると、急に目の前にどーんと大皿が載せられました。
なんとその大皿にはレストランサービスのデザートが10種類近くも乗っていたのです。
こんなに沢山のデザート、誰が食べるのですか・・・?
メニューを頼んでそこにデザートが付いている人にはこのエクストラデザートは持ってくる必要ないんじゃないの?なんてジョン・クロードがカメリエーレに言っていましたが、いつもサービスすることになっているのでなにがなんでもそうするようです。
次回は、一皿か二皿オーダーする事にしよう。
そうすれば、アンティパストは勝手に2回も出てくるし、デザートもサービスで食べきれないほど出てくるからお腹一杯になるよ、と二人でコソコソ話。
その後、別オーダーのコーヒーに又生チョコレートが付いてきたときには、行き過ぎ~、と呆れてしまいました。

食事が終わったのは11時過ぎでしたから、約3時間近く座って食べていたことになります。
立ち上がると足がふらつきました。
でもまったく時間の経過を感じないほどスムーズに食事が出てきて、その間二人でおしゃべりをして笑って楽しく過ごすことが出来ました。
ただちょっと気になったことを言わせて貰うと、レストランの人達が何となく冷たいこと。
何度もテーブルに来てくれて気を遣ってくれたり、ワインやお水を注いでくれたりと、サービスは最高なのですが、イタリア人の陽気さがない。
星のつくレストランとはこんな風にちょっと高貴風にしていなければいけないのかな、それは残念だなと、私は思いました。
お勘定ですがその場でジョン・クロードは教えてくれませんでしたが、家に帰ってお勘定書きを見せて貰うと二人で約300ユーロ(約4万円)でした。
1年に一度のことです。
ごちそうさまでした!

restaurant

restaurant

restaurant

restaurant

restaurant

restaurant