Kiyomi D.

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クリスマスプレゼント

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皆様、クリスマスはどのように過ごされましたか?
友達同士、又は家族でパーティーをやられた方もいらっしゃるでしょうし、プレゼントの交換をされた方もいらっしゃるでしょう。
または、一人でワインでも飲みながら好きな音楽をかけて自分の時間をゆっくり楽しんだ方もいらっしゃるかと思います。

私たちの今年のクリスマスはちょっと思い出に残るものになりました。
それはパーティーでもないし、プレゼントでもないのです。
いえ、プレゼントだったと言えるかもしれません。

私たちの大家(名前はダンテ)はトスカーナの25%の電気を作っているラルデレッロという地熱(蒸気)を利用した地熱発電所のエンジニアです。
3年ほど前から南アメリカのサン・サルバドールに単身赴任し、そこで地熱発電所を作る計画に携わっています。
基礎から発電所を築き上げる仕事ですから向こうでの滞在は勿論長くなります。
それで3ヶ月現地に滞在したら1ヶ月ほどイタリアに帰ってくると言うことを繰り返していました。
ただ、ここ最近は忙しく、イタリアに帰ってくるのはほんの2~3週間程度でした。
そんな彼の仕事もやっと一段落し、後は現地の人に任せてこの12月にダンテはイタリアに帰ってくることになったのです。

以前の日記にも書きましたが、イタリア人は大の携帯電話好き。
朝晩顔を合わせている家族でも日に何度と電話をかけあい、何をしているか、これから何処に行くのか、と連絡し合うのですが、遠く離れているダンテの場合も同じです。
毎日か、そうでなければ2日に一度はダンテの奥さんから、又ダンテから家族に電話が入り連絡し合っていました。
電話料金が心配になりますが、それは他人の余計なお世話ですね。
そんなダンテから12月の28日頃に帰ってくると言う連絡が入りました。
この情報はいつものようにその日の内に家族、親戚中に広まり、やれやれ今年中に帰ってこられるのだとみんなその日を待ちわびる事になりました。

さて、ジョン・クロードとダンテはEメールで情報交換をしていましたが、クリスマス前の水曜日、ダンテからひょっとしたらクリスマスイブの24日に帰れるかもしれない、今、空席待ちだと連絡が入りました。
でもこれは家族のみんなに秘密にしておいてくれとも。
それでジョン・クロードがもし24日に帰ってこられるなら、そしてそれをサプライズにしたいなら僕たちが空港まで迎えに行くからと返事をしました。
これはサスペンスです。
混雑するクリスマス時期に席があるのか、帰ってこられるのか?

そしてとうとう金曜日、ダンテから、席が取れたので24日にピサ空港に到着する、空港まで迎えに来て欲しいと 連絡が入りました。
やったー!
なんだか私たちは素晴らしいプレゼントを運ぶサンタクロースみたいじゃないですか。
24日と言うと奥さんは朝からレストランでお仕事、上の娘はバールで午前中だけお仕事。
他の家族はみんな未だ寝ています(昼近くまで寝ている)。
よしよし、誰にも分からないうちに空港へ出かけられそうです。

いよいよ24日の朝、家族の誰にも会わないかなとドキドキしながら車に乗り込み空港へ出発です。
ところがです、15分ほど走ったところでダンテの奥さん(ダニエラ)のお母さんとお姉さん夫婦が住んでいる町を通るのですが、そこになんと仕事に行く前に挨拶に寄ったのでしょう、ダニエラが歩いているではないですか。
彼女に会うと「何処に行くの?」と訊かれます。
訊かれたくない。
でも、彼女が歩いている道を通らないと空港へ行く事が出来ない。
「どうする?」と私。
「うん?!このまま突っ走ろう!」とジョン・クロード。
スピードをぐんと上げて彼女の横を通りかかったその時、案の定彼女は私たちを見つけて、“あっ、何処へ行くの?”と言う笑顔を向けてきました。
やばい!
止まってはいけないと、私たちは「バイ、バイ!」と手を振って走り去ったのです。

こんな時に彼女に出くわすなんて、ねー、と言いながら空港へ。
ダンテはほぼ時間通りにピサ空港に到着しました。
彼は長旅に疲れてはいましたが、「昼食はやっぱりダニエラ(ダンテの奥さん)の所だろう」と言うことで、彼をそのままダニエラが働いているヴォルテッラのレストランに連れて行く事になりました。
いよいよサプライズが始まるのです。
ウキウキ。
ピサ空港からヴォルテッラの街まで約1時間半。
クリスマスイブの日ですから道路は比較的空いていました(みんなプレゼントの買い物は済ませ、それぞれの家に落ち着いているのです)。

いよいよヴォルテッラ。
ダンテより私の方がワクワクしたりして先を急ぎます。
レストランに到着すると、入って奥まったところがキッチンです。
そこにダニエラが働いているのですが、ダンテは中を見ることなしにさっさとホールの方に入ってしまうので、私がダニエラを呼び出しました。
「あれー、ここに来ていたの!?」
と私に言う彼女の腕をとってホールの方へ導きます。
そこで、「あっ!誰かと思ったらーーー!」と初めてダンテに面会となったのです。
勿論、キスとハッグの2人です。
ダニエラの顔が輝いています。
「今朝あなた達(私とジョン・クロード)を見た時に、ひょっとしてダンテを迎えに行くところじゃないかとちょっと思ったのよ」
と言われて、あれーっ。

その日の内に親戚中にダンテの帰国が広まり、ダンテのお母さんのエリーナおばあちゃんからも家に電話が入りました。
「あんた達はなんて事をしてくれたのよー」と元気いっぱいのそれは嬉しそうな声です。
実はエリーナおばあちゃんは1週間前まで約1週間入院していたのです。
心臓の定期検査で脈数が倍になっていると急に入院させられ、手術もしなければいけないと言われて私たちを含め家族全員が心配したのですが、おばあちゃん自身が「患者の様子を看に来る医者がいつも違うし、看護婦も毎日変わる。病院食も鶏さえ食べないような不味いものだし、こんな病院に自分の身体を任せられない」ときっぱりと手術を断り、家に帰ってきたのです。
普段は家族みんなに食事を作るのが人生の楽しみ、なんて言っている優しいおばあちゃんですが、こういう時にはしっかりと自分の身を守るために強く出た彼女に感心してしまいました。
「わたしはテーブルや椅子と違うんだからね。修理を間違ったと言ってやり直しはきかないんだから」とおばあちゃん。

そう言われた病院側も、よく調べてみると、どうもおばあちゃんの入院は心臓の定期検査をした人の思い違いだったらしいということが分かり、退院の許可を出してくれました。
まぁ、許可を出してくれなくてもおばあちゃんは出てきたと思いますが。
それにしても、自分の身体は自分で責任をとって、病院や医者に任せっぱなしではいけないなぁ、とつくづく思ったしだいです。
おばあちゃんの強さには学ぶところが大でした。

とにかくダンテのサプライズ帰国はみんなを喜ばせてくれました。
入院騒ぎで少し落ち込んでいたおばあちゃんもすっかり元気いっぱい。
クリスマスイブの日にこんなプレゼントって、素敵ですよね。
プレゼントを運ぶ役に立てた私たちもとても幸せでした。

*サイトに乗せた最初の写真はパンドーロ。中に乾燥フルーツなどを焼き込んだものはパネトーネ。チョコレートの入ったものもあり、ふっくら、ふんわり甘いこのお菓子はクリスマスの代表お菓子です。

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