Kiyomi D,

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イタリア人シェフと日本人シェフの合作

del duca Volterra

今年の冬はどの国も例年になく暖かいようで、これで良いのか悪いのか、太陽がいっぱい出ている日を何となく心の底から喜べないような、変な毎日です。
本当にトスカーナは太陽がいっぱいです。
ここ数日ちょっと湿っぽい日があり、結構みんなそれを喜んだのですが、今日も又輝かしい光りで目が覚めました。
オフィスにしている部屋の窓からアーモンドの木が花をつけたのが観られます。
丁度桜の花に似ているのですが、これも例年より早めです。
光りの中でピンクに輝いているアーモンドの花はとても綺麗なのですが、このまま行くと葡萄の木も早くに芽を吹かせ、早くに葡萄の実をつけるのでしょうか。
葡萄の実には朝夕のきゅっとした冷たさが必要だと一度聞いたことがあります。
それが美味しい葡萄、そしてワインを作る秘訣だそうで、このままふわ~んと暖かいままで行くと、しまりのないワインが出来るのかと心配です。
TVでも気候の変化で今年のキヤンティやブルネッロワインの出来を心配しているニュースが流れていました。
地球は確実に変化しつつあります。

さて、私の身近では楽しいことがありました。
まっ、毎日楽しいのですが・・・。
去年、日本へ行った時に、三重県にお住いの繁子さんに奈良の山奥で開いているイタリアンレストラン「ロアジ」へ案内して頂きました。
このレストランの永松シェフは、四季それぞれの野菜は自分の畑で栽培し、肉、魚も地物だけを使い、料理は最初から最後まで全て自分の手をかけて作ったものをお客様に楽しんで頂く、というスローフードを地でいかれる方です。
お店は12名で満席で、シェフと奥様お二人で切り盛りしていらっしゃいます。
パンを焼き、前菜からデザートまで全てシェフ一人で作り、そしてサービスを一人でされる奥様にはこの数が、お客様全てに目を届かせられる限界なのだそうです。
詳しいことは「吉野の里のスローフード」(平凡社)という本に詳しく書かれていますので、よろしければご覧ください。

「ロアジ」レストランでは最初に出てくるパンからそれは美味しくて、日本で正真正銘のイタリアンだと、ジョン・クロードも大変喜んだのですが、イタリア生活の長かった永松シェフとはイタリア語で話が弾み、毎年冬はレストランを閉めてイタリアに食材の買い出しに行くと話す彼に、その際は是非トスカーナにも立ち寄り、私たちの所へいらしてくださいとお誘いしました。
レストランを出る時は食べ切れなかったパンと飲み干せなかったロッソ・ディ・モンタルチーノのワインを瓶ごと手みやげに頂いてしまいました。

その永松シェフが とうとう今月初め、 私の街のはずれにあるアグリツーリズモにレストランのお客様3名と大阪の料理教室の生徒さん2名を引き連れてやっていらっしゃいました。
彼はご自分で車を運転していらっしゃるので、私はヴォルテッラにあるレストラン「Del Duca」のシェフに引き合わせたく、新しくできたアグリツーリズモの予約を買って出ました。
この新しいアグリツーリズモの奥さんが又お料理上手で、みんなでワイワイと楽しく夕食を共にしたのですが、この事は又次回のトスカーナ日記でご紹介しましょう。

さて、イタリア人シェフと日本人シェフの出会いは面白い形で始まりました。
「Del Duca」のシェフが、この時期、レストランは閉まっているけれどみんなのために特別に料理を作るよ、と言ってくれたのを受けた永松シェフが、それでは一緒に料理をしようと、誘ったのです。
これは面白い。
「Del Duca」のシェフはピサ県の料理コンテストで優勝したイタリアの有名シェフの一人であり、又永松シェフは日本ではTVにも出た正真正銘のイタリア料理を作る有名人です。
そんな2人が一緒に料理を作ると言うのです。
こんな夢のようなことは1生に2度とないでしょう。
そしてその2人が作った料理を私たちが食べられると言う、何ともすごいことになったのです。

いよいよその朝、7時半にアグリツーリズモを出て、「Del Duca」のシェフがいるヴォルテッラのレストランへ車を走らせました。
8時に両シェフが一緒に買い出しに行くというのです。
そう言うシェフ達とレストラン前で別れ、女性陣は私を先頭に街の観光と買い物に繰り出しました。
雨が降ったり止んだりの日でしたが、それほど寒くもなく、一応ぐるっと街を廻りましたが、やはりお天気のせいもあり、最後に行き着いたところは革製品のお店。

このお店はバッグやジャケット、ベルト、財布などの革製品を置いている店で、デザインがイタリアらしく新鮮で、しかも安いと来ています。
日記に載せた写真を見てください。
皆さん沢山のお買い物をされました。
いったん買い物が終わった方も、お友達が買っている物を見ては「あー、私も欲しいー」となり、又お買い物。
そんなこんなで1時間以上もこのお店に居着いてしまいました。
どうせお天気も大して良くありませんでしたから昼食までの時間つぶしということで丁度良かったようです。

さぁ13時。
レストランに行ってみると、両シェフがキッチンで買い出しの品々を前に楽しそうに働いていました。
メインを魚にしようと思っていたらお天気が悪くて魚が入っていなかった、ということで、前菜だけ魚介類でメインはお肉となりました。
レストランは閉まっているのですが、私たちが入っているものだから普通の客も入ってきたりして、15人ほどの客を断った後、最後にはドアに鍵をかけてシャットアウト。

待っている私たちも客ではないので、テーブルセッティングをしたり、グラスを運んだりとお手伝いも又楽しいのです。
パンを切ってテーブルに置いたところでいよいよ前菜が出てきました。
ほうれん草のムース、トマトとモッツアレッラ、そしてシャコ。
未だ動いている新鮮なシャコはサッと湯がき、食べやすいように綺麗に甲羅をはずしていました。
これは永松シェフの気配りで、イタリアでこんなに簡単にシャコが食べられたのは初めてです。
いつもは甲羅がそのまま付いた物か、腹の所に鋏は入れてあっても食べにくいものばかり。
永松シェフの手先の器用さに感心してしまいました。
やはり日本人・・・!?

次に出てきたのはムール貝とアサリの蒸し物。
こういうものを食べる時はみんな無口になります。

プリモは「Del Duca」のシェフの手打ちパスタの上にトリフュが一杯かかっているもの。
デザートまで食べられるようにとみんな用心してパスタは少しだけ、と言っていたのですが、あまりのおいしさに全員がお代わりをしてしまいました。
シコシコしたパスタとトリフュの匂い。
未だにその時の感覚がよみがえります(よだれ物)

セコンドは子羊とほうれん草、ウサギとジャガイモのオーブン焼きでした。
作りたてのソーセージも買ってあったのですがとても食べられそうにありませんでしたので、これはパス。
ウサギの肉は今回初めてとのことで、女性陣は大喜び。

最後はデザートです。
いろんなフルーツを小さく切ったマチェドニア風な物をマスカルポーネとヨーグルトで和えた物で甘みをぐっと抑えてあり、もうお腹一杯で何も食べられません、と言う胃にもすっと入っていきました。
これは永松シェフの作。
美味しくってこれも又おかわり。

ワインを飲み、コーヒーを飲み、食後酒を飲んでみんな大満足でした。
レストランを貸し切り、イタリア人と日本人シェフ2人が料理をしてくれると言うチャンスはもう2度とないでしょう。
快くやってくれたシェフ2人に感謝です。
嬉しいことに、永松シェフには今月末に又お会いできるようです。
奥様が遅れて日本からいらっしゃるので、今度は奥様と一緒にこちらに来られるという情報が入りました。
イタリアでレストランを開くのが夢だという永松シェフに、いつか本当にイタリアの空に大きく羽ばたいて頂きたいと願う私です。

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