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トスカーナ郊外の夜店

mercatino

子供も大人も心を誘われる夜店、これも夏の風物詩の一つです。
郊外にある我が町でも毎年夏になると開かれ、町の住人、そして外国の旅行者達で賑わいます。(小さな田舎町ですが、これが以外と旅行者がやってくるのです)
夜店はイタリア語でMercatino(メルカティーノ)と言います。
直訳すると フリーマーケットと出てきますが、実際は手作りの物を売る人たちが露店を出す、言わばハンディークラフト市場のようなものです。

私が、我が町のメルカティーノに行ったのはもう4・5年前になります。
人出は、そこそこ、あったのですが、出ていた店の数も少なく、食べ物屋が2件ほど、ご近所の手作り職人が何名か集まりましたよ、と言う雰囲気のもので、3年連続して見てしまうと、もういいや、と行かなくなりました。
つい先月、美容院に行った際、「去年からのメルカティーノはフィレンツエ在住の人たちによる主催で、以前よりも賑わっているよ」と聞き、あっ、行ってみようかな、と久しぶりに心を誘われました。
以前はわが町に夜店の主催者が2組いたらしいのですが、その内の1組が「一抜けた」と言う感じで抜けてしまい、残った1組も、自分たちだけでオルガナイスをするのは大変だ、ということで、どういういきさつがあったのか知りませんが、結局、遠い町のフィレンツェの人たちに主催を任せたようです。
昔は夏に数回出ていたメルカティーノは、新しい主催者のもと、7月から8月末までの毎水曜日に出る事になりました。

それにしても美容院は最高のインフォメーションオフィスです。
ここから、いろんな情報が町中に流れる、と言うか、町中の情報がここで得られます。
小さな町の美容院、ここではあまりプライベートな事は話さないほうが無難なのです。

ある夕方の8時半頃、私はジョン・クロードと一緒にまだ明るい町へ出かけて行きました。我が家から車で2分ほどのところです。
みんなまだ夕食中だったのか、人出はあまり多くはなかったのですが、露天の数は、4・5年前に比べるとずっと増えていました。
パンと共に生ハムやチーズを揃え、サンドイッチにして売る屋台が数件、それに加え、猪の煮込みやパスタ等の温かい食事を売る屋台が沢山出ていて、それを直ぐ横で食べられるようにテーブルや椅子もあちらこちらのコーナーに用意し、昔に比べるとオルガナイスがプロフェッショナルです。
私たちは写真を撮りながら、ゆっくりと町の中を歩いてみました。
人出を見込んでか、メイン通りにある店舗のほとんどが開いており、町を挙げてのお祭り気分。
新しい主催者に変わって、小さな田舎町が生き返ったようです。

mercatino

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太陽がすっかり沈んで薄暗くなった頃、人出が増えました。
町の人やご近所さんに交じり、北ヨーロッパかららしい外国人旅行者も目立ちます。
通りや路地にはオレンジの電気が灯り、中世の町並みをぼーっと浮かび上がらせます。

出ている露天を見てみると、針金やコイン等を使って作るアクセサリー、木で作ったおもちゃや飾り物、木と紙で作られたランプ、花や草等を使って作った自然石けん、手作りの帽子屋さんや布バッグ屋さん(露天の後ろでせっせと作っていました)等々、やはりハンディークラフト達が集まったメルカンティーノなのでした。
私たちが行った時にはまだ演奏していませんでしたが、バンドが出るらしく、ドラムや楽器が道路の脇に放置されていました。
小さなサーカスらしきものをやってくれる建物が立ち、庁舎の前にはダンスフロアーも用意されて、社交ダンスを踊っている人も。

mercatino

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偶然、隣町の知人に出会い、「あなたたちの町に夜店は出ないの?」と聞いてみたところ、数年前に町長が代わってから、こういうことはしなくなった、と嘆いていました。
紀元前1世紀に作られたローマ劇場があり、エトルリア人が住み始めた最も古い町の一つである隣町は、新しく選ばれた若い町長の節約方針で、何もかもが節約され始め、住人達の町離れが起こっているとか。
年始年末のお祭りも自粛され、若者達は他の町へ流れ、そこにお金を落としています。あまり良い状況とは言えません。

ユーロの下落が強く、各ヨーロッパ国は大変な時期を迎えていますが、 トスカーナにやってくる旅行者も今年はぐっと減りました。
私の知っているアグリツーリズモの経営者達は、「7月と8月に、まだ空き部屋やアパートがあるなんて、こんな事は初めてだ」と 言います。
言いながら、そんなに落胆した様子は見せないのがイタリア人でしょうか。
「まっ、来年は良い年になってほしいな」と付け加えて、後はケセラセラ。
そんな隣町の住人や旅行者たちもやってくる我が町の夜店は、夜遅くまで賑わっていました。

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