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救急処置室

春のような日々が続いているトスカーナです。
今朝、起きてみると地面が濡れていたので、早朝にでも雨が降ったようですが、気温は10度から下がりません。
太陽が輝く日は日中気温が20度近くまで上がることが度々あります。
1月中旬なのに春の花が咲いてきそうです。

そんな気持ちのいい日々の中、私の体の一部がちょっと故障してしまい、普段通りに動けない状態が続いています。
1月最初の日曜日でしたが、私とジョン・クロードが大家さんちの犬ラブラドール2匹を連れて散歩に出ていたとき、普段は見ない犬と遭遇してしまい、犬同士の争いに巻き込まれてしまいました。
争いといっても、ラブラドールは首輪をかけてジョン・クロードが持っていましたから、犬同士が噛みつき合うことはなかったのですが、力の強いラブラドール2匹はそれでもジョン・クロードを引っ張り、その弾みで、前に立っていた私の上にジョン・クロードと犬がのしかかってきたのです。
私はもろに膝から倒れ、打ち身と擦り傷を負ってしまいましたが、さらに悪いことには、起き上がろうと体をよじった時に、私の肋骨がクリッと音を立てたのです。
いや~な予感がしました。初めての経験です。

家に帰ってインターネットで調べてみると、肋骨のヒビは安静にしている他に治療方法がないとのこと。病院へ行く必要がないと知った私は喜んだものです。
 咳をしても痛みがなく、これは幸いだと思った私は、事故から3日目、ジョン・クロードがローマへ出かけた後、家の掃除を始めました。
家中のホコリを取り、掃除機をかけ、バスルームを磨き、さらにアイロンがけをして、トレーナーのズボンの裾を直すためにミシンを使いました。
そしてその夜、肋骨の痛みが増しました。痛くてベッドに横になるのも辛い、ベッドの中では体の向きを変えられない、起き上がろうとすると肋骨に激痛が走る。
「今日はあまり体を動かさないで安静にしているように」
と言って出かけたジョン・クロードから私はきつく怒られてしまいました。

その日から、咳をしても笑っても肋骨に響き、肋骨の痛みをバカにしていた私はひどく落ち込んでしまいました。ひょっとするとヒビだけではなく折れているのかもしれない、などと心配になったりして。
事故から1週間後、治療方法はないとしても、肋骨に何が起こっているのかだけでも知りたいと思った私は、病院へ行くことにしました。
ちょうど同じ時期、大家のいとこの奥さんも肋骨にヒビが入り、救急処置室へ行ったと聞きました。
こんなことで救急処置室へ行くのかと不思議に思いましたが、地元の人が言うのですから間違いはないでしょう。
ジョン・クロードは、隣町にある救急処置室に私を連れて行ってくれました。
救急処置室のサインを頼りに、救急車が入って行く大きな玄関口から歩いて入って行くと、この日は緊急患者の外来がなかったのでしょう、女性二人が受付で穏やかに話をしていました。
私たちが受付の前に立つと、
「何でしょうか?」
と女性の一人に訊かれました。
「転んだ後、肋骨が痛むので、レントゲンを撮ってもらって痛みの原因を知りたいのですが」
と私が言うと、女性二人は顔を見合わせて、
「どうしよう、受け付ける?」
「そうだね、どうしようか・・」
と相談をし始めました。
肋骨を痛めたときは救急処置室へ行くのだと聞いてきた私たちは、二人が相談しているのを見て、ちょっと困惑してしまいました。
受け付けてくれるのか、くれないのか。暇そうな女性二人の会話を見ながら答えを待っていると、
「じゃあ受け付けますので、こちらに来てちょっと待っていてください」
とやっと救急処置室の待合室に通されました。

待合室で10分ほど待っていたでしょうか、とうとう救急処置室の一つに案内されました。
そこはさほど広くない部屋で、真ん中にグリーンのシーツを置いた診察台がドーンとあり、横にあるゴミ箱には血の付いたコットンや注射針が山のように捨てられていて、まさに救急処置室という様子。
あまり長居はしたくない場所でしたが、救急隊員の服装をした男性から色々と質問をされ、やっと2階にあるレントゲン室へ向かいました。
話が長くなるので短くまとめると、私は病院に2時間滞在し、その間にレントゲンとエコグラフィーを撮ってもらい、その結果、肋骨の8番目にヒビが入っていると診断されました。痛み止めを2袋だけもらって、病院を出てきました。待っている時間の方が長かったけど、これで痛みの原因がわかり一安心です。
救急処置室へ行けと言ってくれた大家のいとこの奥さんは、最初は座ったままのレントゲンを撮られ、何も写っていないからと家に帰されたそうです。
1週間後に痛みが激しくなったので救急処置室を再訪すると、そこで初めて私が受けたものと同じレントゲンの機械で撮ってくれたそうです。
患者によって病院側の応対が違うのは、イタリアだからでしょうか。

私の肋骨の痛みは、日によって増したり減ったりしていますが、先生がおっしゃるには完治には1ヶ月かかるそうですから、まぁ気を長くして、この痛みと付き合っていこうと思っています。
重いものを持たないようにと、ジョン・クロードが何かと気を使ってくれるのが、嬉しいやら申し訳ないやら・・・。
そんなジョン・クロードは2月と3月の2ヶ月間、インドへ出かけます。
そのことはまた次回ご報告します。