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コートの仕立て直し

11月に入ってカルカソンヌ、急に寒くなりました。今年はいつもより早く寒くなったように思います。こう寒くなると外出時には暖かいコートが欲しくなります。短いダウンジャケット(デゥデゥム)では足らなくて、長めのウールのコートやダウンコートがちょうどいい感じ。
冬のコートというと、我が家のウォーキングクロセットにマックスマーラのコートが20年ほど吊り下がったままになっていました。
25年ほど前、まだ私たちがスイスに住んでいた時、クリスマスマーケットを見に行ったストラスブールで買ったものです。
ストラスブールはその昔なんどもフランスとドイツで領有権を争った街で、街中にはドイツのアルザス風の木組みの家が見られ、冬には大きなクリスマスマーケットで賑わいます。

私たちが行った日は寒い日でした。ノートルダム大聖堂の上部が霧に隠れていたことを覚えています。クリスマスマーケットでは、可愛い飾り物が売られていたり、暖かいワインもあちらこちらで販売していたり、そぞろ歩くだけでワクワクしていたのですが、その日は午後から急にみぞれが降ってきました。スイスからやってきた私は一応膝までのウールのコートを着ていましたが、みぞれのおかげか冷凍庫の中にいるような寒さに震えました。現地の人たちは慣れているのでしょう、みんな楽しそうにマーケットをのぞいています。私は寒さに負けそうで、どこかで暖かいお茶でも飲もうと広場を横切って路地に入って行きました。
そこはブティックが立ち並ぶ道で、私たちはキラキラなウインドーを横目で見ながら喫茶店を探して歩いていたのですが、あるウインドウに飾ってあるコートが目に入りました。とても暖かそうなコートです。見るとバーゲン中だとか。お店を見上げると、なんとマックス・マーラ。私はもう一度そのコートを見てしまいました。
いったいいくらするのかなと値段を見ると、正札は確か40万円近かったと思います。それがバーゲン中なので20万円前後に値下げされていました。うう~、コートに20万円か~と思いましたが、その暖かそうなコートが寒さに震えている私を暖かくしてくれそうで、私はついウインドウの前に立ち止まっていました。「欲しいの?ちょっと着て見たら・・?」とその時ジョン・クロードが私の背中を押してくれました。彼はいつもそういう時に私の背中を押してくれます。
着てみるだけでお店を出てくるには勇気がいるけど、でも私に合うのなら一生に一度の買い物として買ってもいいかな、今、ちょうど銀行で働いているし、と私は腹をくくって(大げさな、笑)お店のドアを押しました。
結局、そのコートは私には大きすぎました。私のサイズは36か38、コートのサイズは44(!)でした。でも、でも、一度そのコートを着てみると、もう脱ぎたくない。その暖かさは半端ない。「気に入ったのなら買ったら?」とまたまたジョン・クロードが私の背中を押してきます。しばらく考えた末、私は買ってしまいました・・・。

そのコート、寒いスイスでは何度か着用したのですが、それからイタリアのトスカーナにやって来ると、マイルドな気候の冬では着るチャンスがなくて、そのうちに軽いダウンコートなどが市場に出回り、可哀想なマックス・マーラのコートは洋服ダンスに吊り下げられたままになってしまいました。サイズが大きすぎたのも着なくなった理由です。
毎年、目にしながら着なかったコートですが、今年の春、私は40年間お針子さんとしてシャネルやエルメスで働いた経験のあるシルヴィーが作ったピンクのワンピースとジャケットを買っています。そうだ、彼女だったらこの大きなコートを仕立て直してくれるかもしれないと思いつきました。
彼女に連絡を入れてみるとすぐに引き受けてくれて、約1ヶ月後の先週の金曜日、20年間着用しなかったコートが新しいサイズになって帰ってきました。仕立て直し賃は、たったの120ユーロ!今年はいっぱい着て回ってあげよう!

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2001年1月、トスカーナに来た当初、大家さんご夫婦と友達夫婦の合計6人でローマに遊びに行った時の写真です。
後ろに写っているのはコロセウム。私の着ているコートがサイズ44のマックス・マーラのコート。ダブダブです。

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シルヴィーに仕立て直してもらったコート。腕やウエストを細くしてもらい、丈も短くしてもらいました。フードと袖口にファーがついていて、改めて暖かいコートです。

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うっすらと雪を被ったピレネー山脈。少し逆光で、ごめんなさい。

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同じ日に行った、ミディ運河の貯め池の横にある散歩道。11月初旬に行った時は、まだ青々としていた木々の葉が、綺麗に紅葉していました。

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紅葉の中に太陽の日差しが輝いて、なんだか夢の中を歩いているようでした。癒されます。

秋の素晴らしさ、楽しみましょう。